介護士の外国人材!在留資格はどう選べば良い??
『技能実習』・『特定技能』の違い
2019年4月に制定されたのが「特定技能」制度ですが、元々存在していた「技能実習」制度と名前も似ているし、この2つ一体何が違うの?と疑問に思った方も多いのではないでしょうか。
実はこの2つの在留資格は、まったく違う制度なのです!!
今回は、この2つの制度の違いを知りたいという方に、簡単にポイントを抑えて解説致します。
また、介護職で受け入れた際の、「技能実習」と「特定技能」のメリット・デメリットについても合わせて解説致します。
まずは、「技能実習」と「特定技能」についてご説明致します。
「特定技能」とは、2019年4月に創設された、国内人材を確保することが困難な状況にある産業分野(14業種)において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的とする制度です。現在は「特定技能1号と2号」があります。
特定技能2号について現在は、2業種のみ取得ができますが、今後は更に増えていくことが予想されています。
「技能実習」とは、1993年に導入された在留資格で、開発途上国出身の方に日本の高い技術を現場での実習を通じて習得してもらい、帰国後に培った技術を広めていただくという国際貢献のための制度を目的としています。
では、以前からある「技能実習制度」と、2019年に新設された「特定技能」にはどんな違いがあるのでしょうか。
【その1】 制度の目的と背景
「特定技能」と「技能実習」では、そもそも制度の目的が違います。
これが非常に重要なのです!
「技能実習」といえば、テレビなどの影響で「就労」のイメージがあるかと思いますが、冒頭でもお伝えした通り、開発途上国への協力という「国際貢献のための制度」として設けられた在留資格となります。日本で学んだ技能を母国に伝えることを目的としているのです。
一方、特定技能は「就労」のため、人手不足を補うために設けられた在留資格なのです。
在留資格 | 施工 | 目的 |
技能実習 | 1993年 | 技能移転を通じた、開発途上国への国際協力 |
特定技能 | 2019年 | 人材を確保することが困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有し、戦力となる外国人を受けて人手不足を解消する |
【その2】就業可能な業務や業種
「技能実習」と「特定技能」では就業可能な分野や業種が違います。
特定技能は現在14職種、技能実習は85職種(156作業)あり、技能実習は業務内容が非常に細かく分かれています。
「特定技能」は「技能実習」に比べて業務を幅広く行うことができますが「技能実習」は、一定の条件を満たすと「特定技能」に移行することができるので勘違いしやすい事も実態にあります。
【その3】在留期間
「特定技能」は、在留資格を都度更新することによって在留期間が5年まで延長できます。また、「特定技能2号」に移行すれば在留の上限はなくなります。
ちなみに家族の帯同も可能となりますが、現在は、造船と建設の2業種のみが対象となっています。
一方で「技能実習」は1号、2号、3号の実習で最長5年まで在留する事ができます。
ただしそのためには、実習生が技能実習評価試験を受けて合格することが必須となります。1号→2号移行時は学科と実技の合格が必須、2号→3号移行時は実技の合格が必須となります。
また、「技能実習介護」の場合、2号→3号移行時の際は、実技の合格+日本語検定3級(N3)の合格も必須となります。
【特定技能】 | 【技能実習】 |
1号:通算5年 2号:上限なし | 技能実習1号:1年以内 技能実習2号:2年以内 技能実習3号:2年以内(合計で最長5年) |
「特定技能」の創設以前は、「技能実習」修了後技能実習生は帰国する道しかありませんでした。
しかし、「特定技能」が創設し、「技能実習」から「特定技能」への切り替えが可能になり、引き続き日本に在留できるようになったのです。つまり技術や日本語を習得した実習生が、経験を活かして引き続き日本で働けるということです。
「特定技能」への移行は、「技能実習」2号修了後から可能となります。
【その4】転職が可能かどうか
「技能実習」は労働が目的ではないため、転職という選択肢は原則存在しておらず禁止です。就業先が変わる場合は「転籍」となります。
一方で「特定技能」は就労資格となるので、同一の職種であれば転職が可能となります。また、技能実習から特定技能への移行の際は、転職も可能になります。
【特定技能】 | 【技能実習】 |
転職可能 | 原則不可 |
【その5】受け入れ方法と受け入れ人数の制限
▼受入れ方法
「技能実習」は、海外の送り出し機関と提携している監理団体からの紹介でしか受入れることができません。
一方で「特定技能」に関してはとくに制限はありませんので、受入れ企業自ら採用を行ったり、紹介会社を利用したり選択することができます。
【特定技能】 | 【技能実習】 |
制限なし | 海外の送り出し機関と提携する、監理団体かの紹介のみ |
▼受入れ人数
「特定技能」は原則、人数枠がありません。(※介護と建設分野を除く)
それに対して、「技能実習」には細かい人数枠の制限があります。企業で適切な指導ができる人数に、予め制限されています。希望する人数だけ、受け入れることができるわけではありません。
【特定技能】 | 【技能実習】 |
人数枠なし(※介護と建設分野を除く) | 人数枠あり(常勤職員30名以下の企業は3名、優良企業は6名まで等) |
【その6】家族帯同の可否
多くの外国人労働者にとって、家族の帯同ができるかどうかは、日本で長く働くかどうかを決める重要な項目の一つと言って良いでしょう。家族と日本で一緒に暮らすことができれば、長く働く選択肢になります。
多くの外国人労働者は、「母国に家族を残しているので帰国します」となることも少なくありません。
「技能実習」は、日本で学んだ技能を母国に伝えることを目的としているため、制度上帰国が前提となり、家族の帯同は認められていません。
一方で「特定技能」においては、特定技能1号に関しては認められていませんが、特定技能2号は配偶者とその子供であれば帯同が可能です。ただし、特定技能2号は、2022年6月現在、2業種(建設、造船・舶用工業)しかありません。しかし今後、他の業種でも家族の帯同が認められる特定技能2号を創設する予定です。
【特定技能】 | 【技能実習】 |
1号:不可 2号:要件を満たせば可 (建設、造船・船舶工業のみ) | 不可 |
2つの制度の目的が違うことが分かることで、受入れを検討している会社にとってどちらが自社に合っているのか比較する事ができます。
ここまでの比較及び、それ以外の細かい違いは下記の表も参考にして下さい。
ここまで、「特定技能」「技能実習」2つの在留資格の違いを見てきましたが、受入れに関して、どちらの在留資格を選べば良いのか、自社に合っているのはどちらなのか、迷ってしまう方も多いかと思います。
自社にとってどちらの在留資格の求職者を選べばいいのか・・
どちらの在留資格にもそれぞれにメリット・デメリットがあり迷ってしまいます。
【重要なポイント!!】働いてほしい業務が可能な在留資格を選ぶ
「特定技能」「技能実習」に限らず、まずは該当の業務、職種で働くことが可能な在留資格を選ぶことから始めてみてください。
就労が認められていない在留資格では雇用してはいけません。許可されていない業務で働かせることは、不法就労助長罪にあたり、雇用主が懲役や罰金を科される場合があります。
また「技能実習」の場合は、業務が非常に細かく分かれています。ちょっとした作業であっても範囲を超えた業務を行うことはできません。幅広く単純労働の業務をしてほしいと考えている場合は、特定技能での雇用でも良いかもしれません。
しかし、この2つの制度のメリットとデメリットをしっかり認識し、
自社にとってどちらが合っているのかを見極める事が最も重要であり、採用するからには自社にとってプラスになる選択をしていただきたいと思います。
次に、今最も人手不足が加速している業種「介護」に関して、「技能実習」と「特定技能」どちらで受入れをしたら良いか、迷っている施設の方へ、簡単にメリット・デメリットをお伝え致します。
▼介護職「技能実習」のメリット・「特定技能 」のデメリット
まず「技能実習」のメリットとして、転職がないという事です。
先程からもお伝えしている通り、「技能実習」は、特定の事業者(事業所)において技術を習得する目的で外国人に日本在留を許可するという事が目的です。
仕事の種類(作業)も就業場所も自由に変えることができません。
つまり、転職という概念がないのです。
事業者様の一番の悩みは、離職率が高いことです。
採用しても、採用しても、辞められてしまう。その繰り返しに困り果てている事業者は少なくありません。
転職という概念がない「技能実習」は、事業者様にとっては大きなメリットです。
一方で「特定技能」においては、原則として同一職種において転職は認められています。
費用や手間・時間を費やして外国から受入れた外国人に、あっという間に転職されてしまうとしたら、それは事業者様にとっては絶対に避けたいことであり、最大のデメリットではないでしょうか。
2つ目の「技能実習」のメリットとして、在留期間が長く、最大で10年日本で働けるという事です。
「技能実習」は最長5年間日本で働く事が出来ます。
技能実習2号まで(実習期間3年)修了していれば、とくに試験などもなく特定技能1号に移行することができます。
特定技能1号では5年間日本で働くことができるため、技能実習を3年修了した後、特定技能1号へ在留資格を変更すれば、技能実習期間と合わせて合計8年間日本で働くことができます。
また、技能実習3号まで(実習期間5年)修了した後、特定技能1号へ在留資格を変更すれば、最大で合計10年間日本で働くことができます。
一方、特定技能については、現状介護職種は特定技能2号への移行対象ではないため、1号期間のみの雇用となり、最長でも5年の雇用期間となります。
5年以上の長期雇用を希望している事業者にとっては、デメリットと感じる部分となるのではないでしょうか。
1人の外国人介護士をできるだけ長い期間雇用したい事業者様は、まず技能実習での受け入れを行い、その後特定技能1号へ在留資格を変更することで8年~10年間の長期雇用が可能となります。
▼介護職「特定技能 」のメリット・「技能実習」のデメリット
次に特定技能1号のメリットを解説していきます。
「特定技能」のメリットは人員配置基準に配属後すぐに算入できる事です。
一方で、「技能実習」の場合は、実習生を事業所に配属してから、6ヶ月間は人員配置基準に算入できないことがデメリットとなります。
度重なる介護報酬の削減や人材不足などにより、経営状態が悪化している事業者様もある中で、外国人を雇っても、国から介護士として認めてもらえない(人員配置基準にカウントできない)ということは、もうひとり介護士を雇わなければならないということです。
外国人介護士を配属後すぐに人員配置基準に入れたいと考えている事業者様は、「特定技能」にメリットを感じる事でしょう。
2つ目の「特定技能」のメリットは、新設して3年未満の事業所でも外国人の雇用が可能ということです。
一方で、「技能実習」においては、施設開所後3年間は実習生の受け入れができないというデメリットがあります。
特に事業展開を積極的に実施している事業者様においては、新設事業所で外国人介護士を受け入れることができないのは、とても困ることです。
なぜなら、新設事業所こそが一番人手を集めるのに苦労するからです。
新設事業所をお持ちの事業者様において、特定技能を選ぶケースが多くなると思われます。
3つ目の「特定技能」のメリットは、外国人介護士の雇用における受け入れ人数枠が大きい(雇用できる人数が多い)というところです。
「技能実習」においては、初年度は例えば1事業所の常勤介護職員数が60名の場合は、実習生を6名しか採用することができません。
次年度になれば、最初の6名が技能実習2号に移行するため、技能実習1号の枠が空き、また追加で6名採用できることになります。
3年目も同様で、2期生の6名が技能実習2号に移行しますので、技能実習1号の枠が空き、さらに追加で6名採用できます。
つまり、常勤介護職員数が60名の事業所においては、3年間で18名まで実習生が雇用できます。
一方で、「特定技能」は初年度から、常勤介護職員の数が上限になるので一度の多くの人材を雇用する事ができます。
「特定技能1号」の受け入れ人数枠は、事業所単位で日本人等の常勤介護職員の総数を超えないこととされています。
また、「日本人等」については、下記の外国人材はそれに含まれます。
▼介護福祉士国家試験に合格したEPA介護福祉士
▼在留資格「介護」により在留する者
▼永住者や日本人の配偶者など、身分・地位に基づく在留資格により在留する者
つまり「日本人等」の中には、技能実習生・EPA介護福祉士候補者・留学生は含まれません。
人材不足に困っている事業者様は、常勤介護職員数まで一度に沢山の外国人を雇用できる「特定技能」にメリットを感じる事でしょう。
▼介護職での「技能実習」と「特定技能」の選び方
上記の2つの在留資格のメリット・デメリットから、
介護職で「技能実習」と「特定技能」を選ぶ際におさえておくべきポイントは下記のようになります。
★「技能実習」がおすすめ
・転職の心配を最小限にとどめ安定的な雇用をしたい場合
・確実に外国人介護士を受け入れたい場合
(面接候補者が集まりやすいため)
・1人の外国人を長期雇用したい場合(最大10年)
★「特定技能1号」がおすすめ
・雇用後すぐに人員配置基準に参入したい場合
・新設の事業所で外国人を雇用したい場合
・雇用初年度から最大人数を雇用したい場合
「技能実習」と「特定技能1号」はどちらが良いか?とよくご質問を頂きます。
双方のメリット・デメリットによって、ケースバイケースでその判断は分かれるようですが、とくに介護事業者様の事情によっては、「技能実習」と「特定技能1号」のメリット・デメリットの感じ方はそれぞれ異なります。
まずは、御社にあった採用や受入れ方法を一緒に考え、ご提案させて頂ければと思っております。
ぜひ、ARCH plusへお気軽にお問い合わせ下さいませ。
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