外国人材定着のための支援策|企業が実践すべき7つのポイント
日本に来る外国人労働者の多くは、家族や友人と離れ1人で日本に来ています。新しい文化や環境に適応する過程で、孤独感や不安に直面することも少なくありません。彼らにより長く働いてもらうために、企業は適切な労働環境を整えるとともに、地域社会に溶け込むための支援体制が重要になってきます。今回は、外国人材の定着を促進するための取り組みを詳しく解説します。
1. 入社前後の支援を強化する
外国人材のスムーズな定着を実現するには、入社後だけでなく、入社前の事前サポートが不可欠です。
入社前には、日本語教育や日本の生活文化についての研修を実施し、文化の違いやルール等について学ぶことで、外国人材と日本人とのすれ違いや職場へのギャップの軽減に繋がり、また住居の手配や日常生活に必要な情報提供を行うことで、初期段階での不安を解消します。
入社後には、できる限り専属のサポート担当者を配置して、業務や生活の悩みに対応する仕組みを整備すると良いでしょう。彼らは仕事に対して熱心ですが母国への強制帰国を恐れるあまり、困っていることについて上司に相談をしてくれません。担当者がいることで気軽に悩みを打ち明けてくれるので、トラブル回避に繋がります。担当者を設置する代わりに、監理団体や登録支援機関に委託してサポートを受けても良いでしょう。
入社前の取り組み
- 言語と文化の事前教育
日本語の基礎教育だけでなく、日本の職場文化や生活習慣についての知識を提供する研修を実施。これにより、入社後のギャップを最小限に抑えられます。 - 生活基盤の整備
住居の手配や必要な生活用品の提供、通勤手段の案内など、日常生活をサポートする仕組みを整え、彼らが安心して生活できるようにする。
入社後のフォローアップ
- 専属サポート担当者の配置
職場内での業務指導や相談窓口を設置し、業務や生活上の課題に迅速に対応できるようにする。 - 初期研修の実施
職場のルールや彼らの仕事の役割について明確に「やさしい日本語」もしくは専門用語の多い場合であれば英語で伝えることで、彼らが考えているルールや仕事内容と同じであるか明確にする。
2. 公平で透明な労働条件と将来目標の提供
外国人材が安心して働ける環境を作るためには、公平で透明性の高い労働条件を提示することが重要です。
日本で働く労働者同士のネットワークもあるため、他社情報も耳に入る可能性があります。彼らにはなるべくお給料の詳細部分や、どのスキルや検定所持で昇給するか等、目標を立てながら説明すると、企業への不信感や他企業の誘惑に負けることも少なくなるでしょう。
- 労働条件の明示
母国語や英語で詳細な雇用契約書を作成し、労働条件や福利厚生について説明する。 - キャリアアップの支援
長期的なスキルアップや昇進の条件について丁寧に説明することで、外国人材が働くモチベーションを高めることができます。介護分野では介護福祉士資格の取得支援が代表的な事例です。
3. 生活面での支援とメンタルケア
日本で生活する外国人材は、言語や文化の壁だけでなく、孤独感やストレスに直面することが多いです。これを支えるための取り組みが必要です。特に地方に位置する企業では、地域に馴染めずにいると孤独感を強く感じやすいので注意が必要です。
- 日常生活のサポート
日常生活の困りごとを解決するため、ゴミ出しや公共交通機関の利用方法などの基本的なことを教える、また余裕があれば初期に身の回り品の買い出しに同行することも不安解消に繋がります。 - メンタルヘルスケア
定期的な健康診断やカウンセリングを通じて心身の健康をサポート。職場内でのイベントを開催し、外国人同士や同僚とのつながりを築くことも重要です。
4. 多文化共生を推進する職場づくり
職場では、日本人社員と外国人材が互いに文化を理解し合える環境を作ることが必要です。
日本人従業員の中には、外国人の行動や言動について気になってしまう人もいるでしょう。またそうでなくても、文化や習慣の違いから誤解が生じる場合があります。そのため、従業員用の研修や多言語対応のマニュアルを整備し、日常業務がスムーズに進むようにすることが重要です。
- 日本人社員向けの研修
外国人材の文化や背景を理解するための教育を実施し、偏見や誤解を解消。 - 多言語対応
職場内の掲示物や業務マニュアルを多言語化することで、外国人材が円滑に業務を進められる環境を整えます。
5. 地域社会との連携
外国人材が地域社会に溶け込むためには、企業と地域の協力が不可欠です。
地域の日本語教室を紹介したり、地元イベントへの参加を支援したりするなど、地域との関わりを持つことで孤独感を感じずに充実した日々を過ごすことができ、その地域への定着の一歩となります。
- 地域イベントへの参加促進
地域のお祭りやボランティア活動に参加する機会を提供し、地域住民との交流を深めます。 - 日本語教育の支援
地域の日本語教室の活用を支援し、日常生活に必要な語学力を向上させます。
人手不足に悩まされる現代社会では、地方行政が日本語支援や地域交流等のイベントなどを開いていることもあります。所属する自治体でのイベント情報を一度調べてみると良いでしょう。
6. 事業規模別の対応
これらのことを一度に実行するのはなかなか難しいかと思います。その時々の状況に合わせて、まずはできることから始めると良いでしょう。
従業員数50人未満の企業の場合:
- 地域の日本語教室や行政の支援制度を積極的に活用する。
- 地域コミュニティに参加させて、地域と外国人が馴染めるようにする。
- コストを抑えるために、他企業との連携や共有サービスを利用。
- 担当者を専任ではなく兼任で配置し、効率的なサポートを目指す。
- 登録支援機関や監理団体に委託する。
「ビザ申請について自分たちで行えば外注の必要はないのでは?」と考える方も多いかもしれません。しかし、規定も多くそのための学習自体にコストがかかり結果的に割高になってしまうので、最初から専門家に任せる方が効率的です。
従業員数50〜300人の企業の場合:
- 社内に外国人材サポート専任の担当者を配置する、もしくは登録支援機関や監理団体に委託する。
※外国人が100人以上いる場合は、委託ではなく、専属部署を立ち上げ担当者を配置することも考えて良いでしょう。
- 多言語対応のマニュアルを作成し、外国人材が業務を円滑に進められる環境を整える。
- 定期的な研修や社内イベントを開催し、異文化理解を促進。
7. 情報発信サイトの活用
外国人材が必要な情報を自分たちで入手できるように、情報発信サイトを活用することも重要です。
メディアだけでなく、SNSでも各国の人に向けての情報発信アカウントがありますので、ぜひ外国人に案内してあげてください。
- NHK World Japan(多言語で日本の生活情報を提供)
https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/ - Immigration Services Agency of Japan(出入国在留管理庁の情報)
http://www.moj.go.jp/isa/ - ARCH plus Facebook(フィリピン人用タガログ語)
https://www.facebook.com/archplusgroup
また外国人材を受け入れている企業に向けてのメディアやSNSもありますので、受け入れる企業側でも定期的にチェックすると良いでしょう。
まとめ
外国人材の定着を図るには、職場環境の整備、生活支援、地域社会との連携を総合的に行うことが鍵になります。家族や友人から離れた環境で働く外国人材に対して、企業側が包括的な支援を提供することで、彼らの生活基盤が安定し、企業にとって有益な効果が期待できることでしょう。少子高齢化で人手不足の現代社会では、日本人労働者と同様に、外国人材も他企業からのオファーを受ける可能性もあるため、その中で労働者が企業に定着するためにできることを進め、実績として積み重ねていくことが重要です。
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