特定技能『介護』とは?
フィリピン人特定技能外国人の受け入れ要件と条件・・
2018年に在留資格「特定技能」が創設され、2019年4月から受け入れが可能となった特定技能は、国内人材を確保することが困難な状況にある14職種の産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的とする制度です。
介護もその1つであり、少子高齢化が深刻となる中、人手不足が今後ますます加速すると言われている介護業界で、即戦力の期待できる外国人を受け入れる事が出来るようになりました。
ただし、介護分野の特定技能外国人を受け入れるためには色々な要件があり、その要件をクリアしていかないと、受け入れる事はできません。
まだまだ新設されたばかりの在留資格で受け入れに関しての経験や知識がなく、不安を抱えている方も多いかと思います。
介護分野の特定技能外国人の受け入れの現状
2024年までに60,000人の特定技能外国人の受け入れを目標としていましたが、新型コロナウィルスの影響により、2020年末時点では介護分野における特定技能外国人は939人にとどまっており、目標から大きく外れる結果となりました。
介護業界は、5年後の人材不足見込み数が30万人と特定技能14職種の中でも最も多い数字です。2020年度末までに約26万人、2025年度末までに約55万人が目標となっていて、1年間で6万人の人材を確保する必要性があります。令和3年6月末時点での介護分野での特定技能外国人受け入れ人数は、2,703人でした。しかし現実的には生産年齢の減少などにより必要な人材を確保することが難しくなっています。
特定技能「介護」は、今後さらに受け入れを拡大していくことが求められます。
介護分野で即戦力となる外国人の雇用を可能とし、深刻な人手不足を解決する為にも、企業側と外国人側の要件と受け入れにあたっての注意点を、詳しく見ていきましょう!
特定技能「介護」受け入れの要件 ~企業編~
介護分野で特定技能外国人を受け入れるためには、事業所の種類、雇用形態、報酬、受け入れ人数と期間などいくつかの要件を満たす必要があります。
これらの要件を満たさないと特定技能外国人を受け入れることができません。
また、特定技能外国人の受け入れを申請しようとする企業は、法令・雇用に関して次のような条件を満たしている必要があります。
▼労働、社会保険、租税関係法令を遵守していること
▼1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと
▼5年以内に出入国・労働法令違反がないこと
その他にも、色々な要件や注意しなくてはいけないことがあります。
その①訪問介護サービスでの受け入れはできません
特別養護老人ホームや介護老人保健施設、特定介護福祉施設、グループホーム、通所介護事業所(デイサービス)などの介護施設が、特定技能外国人を受け入れることができます。
ただし、訪問系の介護サービスにおいて特定技能外国人の受け入れは不可です。また、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅などの介護サービスを提供しない施設においても特定技能は適用しません。
その②雇用形態は、直接雇用のみ
直接雇用のみとなり、派遣社員として雇用することは禁止されています。
また、フルタイムでの雇用が必要になるため、短期勤務やアルバイトとして特定技能外国人を雇用することはできません。
また特定技能は、日本にいる外国人も海外にいる外国人もどちらも受け入れることができます。日本の生活に慣れている外国人も、技能実習を修了して母国に帰っている外国人も雇用できます。
直接雇用でさえあれば、国内外問わず介護業の特定技能で受け入れることが可能。介護施設の受け入れを考えている方にとってはうれしい制度です。
その③報酬は日本人同等以上
報酬は、同じ業務に従事する日本人の社員と同等以上を支払わないといけません。
研修期間やほかの福利厚生も同様です。
その④業務内容は、身体介護と支援業務がメイン
特定技能外国人が従事できる業務は次の2つです。
▼身体介護業務:利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつの介助
▼支援業務:レクリエーションの実施や機能訓練の補助など
また、上記の業務に付随する業務に従事することも可能です。
ただし、付随する業務を主な業務として働くのは禁止されています。
利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつの介助等を行います。また、これに付随するレクリエーションの実施、機能訓練の補助等も業務として認められます。
同業務の日本人が通常行うお知らせ等の掲示物の管理、物品の補充等の関連業務につくことは可能。しかし、介護分野以外の業務を担当させることはNGなので、十分注意が必要です。
手が空いているからといってなんでもかんでも特定技能外国人に頼むことはできません。
その⑤受入れ人数に制限あり。日本人の常勤職員数の数だけ雇用可能!
介護分野で特定技能1号の外国人を受け入れる場合、受け入れのできる人数の上限が決められています。
1つの事業所に対し、日本人等の常勤介護職員の数が上限です。この場合の「日本人等」という表現には、以下のような方が含まれています。
▼日本人の介護職員
▼EPA介護福祉士(EPAで介護福祉士を取得した者)
▼在留資格「介護」
▼永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等の在留資格を所持している者
また、「日本人等」にカウントされないのは、以下のような方です。
▼技能実習生
▼留学生
▼EPA介護福祉士候補者
EPAの在留資格で滞在している場合は、介護福祉士の試験に合格して介護福祉士と認定された場合、日本人でなくても日本人等としてカウントして良いということになります。
特定技能外国人の数が日本人等の常勤職員数を超えてはいけないことを、覚えておきましょう!
また、受け入れ期間の上限は5年と決まっています。
その期間が満了すると、特定技能外国人は母国へ帰国しないといけません。
その⑥介護分野における特定技能協議会の加入
介護分野の特定技能外国人を受け入れる企業は、その分野における特定技能協議会に加入しないといけません。
特定技能協議会とは、各構成員の連携緊密化を図り、特定技能外国人が適正に受け入れられるような体制作りが目的とされています。
外国人の受け入れ企業のほかに、法務省や警視庁などの省庁や介護分野に関連する団体と学者も協議会の構成員となります。
特定技能外国人を受け入れる企業は、その外国人が入国後4ヶ月以内に協議会事務局のオンラインシステムで申請を提出しないといけません。
また、次の書類をコピーしてアップロードする必要があります。
▼特定技能の雇用条件書
▼特定技能外国人の支援計画書
▼事業所の概要書等
▼日本語能力水準を証明する書類:介護日本語評価試験・日本語能力試験等の合格証明書、介護福祉士国家試験結果通知書、技能実習評価試験の合格証明書など
▼技能水準を証明する書類:介護技能評価試験の合格証明書、介護福祉士国家試験結果通知書、技能実習評価試験の合格証明書など
▼在留カード
その⑦特定技能外国人への就労・生活支援が必要
介護分野の特定技能外国人がその在留資格に基づく活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするため、受け入れ企業が外国人への職業生活上、日常生活上または社会生活上の支援が求められています。
支援項目は下記、10個です。
- 事前ガイダンス
- 出入国する際の送迎
- 住居確保・生活に必要な契約支援
- 生活オリエンテーションの実施
- 公的手続等への同行
- 日本語学習機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 転職支援
- 定期的な面談の実施、行政機関への通報
特定技能外国人を実際に受け入れる前に、それぞれの支援項目に対して計画を立てて出入国在留管理庁に提出する必要があります。
特定技能「介護」受け入れの要件 ~外国人編~
介護分野の「特定技能」に申請するには、外国人が技能水準と日本語水準の条件を満たさないといけません。次の試験に合格すればそれらが満たされていると判断されます。
▼介護技能評価試験
▼介護日本語評価試験
▼日本語能力試験N4レベル、または国際交流基金日本語基礎テストA2レベル
しかし、元EPAや元技能実習生は試験が免除になるのでハードルが下がります。
介護分野で即戦力となるためには、試験は必須。でもその試験が免除になるのであれば、こちらも知っておきたいポイントになります。
まずは3つの試験について確認していきましょう!
▼介護技能評価試験
この試験は厚生労働省が介護分野における特定技能外国人の技能水準を測定する試験です。学科試験と実技試験があります。
介護技能試験と介護日本語試験の学習テキストは、厚生労働省のホームページから閲覧可能です。各国の言語に対応しているので、学習に役立ててみて下さい。
試験の問題は4つのカテゴリーから出題されます。
①介護の基本
介護における人間の尊厳と自立、介護職の役割職業倫理、介護サービス、介護における安全の確保とリスクマネジメントの4つの項目がテストされる
②こころとからだのしくみ
からだのしくみの理解と介護を必要とする人の理解に対して評価する
③コミュニケーション技術
コミュニケーションの基本と、利用者やチームメンバーとのコミュニケーションについて出題される
④生活支援技術
移動の介護、食事の介護、排せつの介護、みじたくの介護、入浴・清潔保持の介護、家事の介護の6項目がテストの対象となる
介護技能評価試験は日本国内だけでなく海外でも実施されています。現時点では、カンボジア、インドネシア、モンゴル、ミャンマー、ネパール、フィリピン、タイなどの国で開催された実績があります。
▼介護日本語評価試験
この試験では、円滑に業務を進めるため介護の現場で実際によく使われる言葉について問題が出題されます。
介護日本語評価試験は厚生労働省が主催する試験です。
2019年4月より開始され、すでにフィリピンで試験が行われています。
試験の内容については、下記の3つのカテゴリーから出題されます。
①介護のことば(5問)
②介護の会話・声かけ(5問)
③介護の文書(5問)
◆試験時間:30分
◆問題数:全15問
◆合格基準:問題の総得点の60%以上
▼日本語能力試験N4レベルまたは国際交流基金日本語基礎テストA2レベル
一定以上の日本語能力水準があると認められるために、「国際交流基金日本語基礎テスト」のA2、もしくは「日本語能力試験」のN4以上を取得する必要があります。
それらのテストに合格すると、外国人が基本的な日本語を理解することができ、自分の背景や身の回りの状況など、簡単な言葉で説明することができるとされます。
▼試験が免除される場合について・・
下記に該当するものは、試験の免除が認められます。
①技能実習2号良好に修了した者
介護分野における技能実習2号を修了した外国人は、特定技能に移行することができます。技能実習2号の修了者を受け入れる場合、技能実習修了証の確認と提出が必要となります。選考の際に外国人に提示してもらいましょう。
②EPA介護福祉士候補者
EPA介護福祉士候補者とは、介護福祉士養成施設の実習施設と同等の体制が整備されている介護施設で日本の介護福祉士国家資格の取得を目指す外国人です。
厚生労働省が指定した養成施設で4年の間の研修・勤務をして、かつ介護福祉士国家試験に5割以上得点すれば、一定の専門性があると認定されるため特定技能に切り替えることが認められます。
この場合、外国人の介護福祉士国家試験結果通知書の提出が必要です。
③介護福祉士養成課程を修了した者
介護福祉士養成課程は、介護福祉の専門職として、介護職のグループの中で中核的な役割を果たし、介護ニーズの多様化等に対応できる介護福祉士の養成を図るものです。
医療福祉専門学校や大学においてその課程を修了すると介護分野において、一定の専門性・技能があると認められます。修了の証明として、学校から卒業証明書を提示してもらう必要があります。
その他・・・
介護分野における特定技能外国人は、人員配置基準に就労と同時に算定する事を可能とするとして、入国前に受ける介護技能・日本語評価試験に合格しているのであれば必要なスキルを既に持っていると見なし、初日から日本人職員と同等の扱いで構わないとルール上、定められております。
技能実習制度では、実習を開始してから半年後に初めて人員配置基準に算定されるので、特定技能外国人の介護分野においては、そのあたりが大きな違いになってくるのでは無いでしょうか。もちろん夜勤も可能です。
ただし、一定期間(半年を目処)は日本人職員がサポートに入り、仕事に慣らすことが望ましいとされております。
夜勤も就労開始から半年間は1人で行わせず、日本人職員のサポートが受けながら徐々に慣らしてい必要があります。
まとめ・・・
在留資格「特定技能」の設立により、介護分野における受け入れが可能となりました。
即戦力となる特定技能外国人を受け入れるためには、企業は下記の要件を満たす必要があります。
①事業所の種類:訪問介護サービス以外の介護施設
②雇用形態:直接雇用である
③報酬:日本人の同等以上
④業務内容:身体介護と支援業務がメイン
⑤受け入れ人数は日本人の常勤介護職員の総数以下
⑥受け入れ期間は最長5年まで
また、受け入れにあたっては企業が特定技能外国人に向けて支援計画を策定し、実施しないといけません。
支援項目も合計10項目あるので、どこから始めれば良いかわからない企業もいるかと思います。その場合はぜひ、ARCH plusへご相談下さいませ。御社のご希望をお伺いし、安心して進められる方法をサポートいたします。
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