外国人技能実習制度の問題とは?トラブルの防止策・解決策は?
こんにちは。アーチプラスです。
「外国人技能実習生を受け入れたいけれど、ニュースでよく悪い噂を聞くから不安」
「社員がトラブルを恐れて、受け入れに対してネガティブ」
多くの技能実習生が入国した今でもこのような声をまだまだ多くあります。
ニュースでよく伝えられている問題点と、その防止/解決策を実例を交えてお伝えします。
「受け入れたいけど、不安」という方は是非ご一読ください。
「外国人技能実習制度とは」はこちら
目次
外国人技能実習制度でよく指摘される問題点
受入企業の問題
受入企業でしばしばある問題は、外国人技能実習制度に限ったことではありません。
ただ、外国人だと「騙しやすい」というイメージがあり、より悪化することもあるようです。
・低賃金、残業代未払い、長時間労働
厚生労働省によると、2018年に労働基準監督機関が監督指導を行った約6,000件のうち、約4,200件が労働基準関係法令違反に当たりました。
これは外国人に対してだけの問題ではありませんが、外国人技能実習生の場合、失踪などにも繋がり、しばしばニュースで話題になります。
・パワハラ、セクハラ
よくニュースになる事例は、パスポートや在留カード、ひどい場合は通帳やカードを取り上げ、外国人の自由を規制するなどが挙げられます。
また、上司によるパワハラやセクハラもしばしば失踪の理由としてニュースに取り上げられています。経営層の気づかないところで、暴力が振るわれていたこともしばしばあります。
・労災隠し
仕事で怪我をした瞬間、クビになり強制帰国を命じられた、という事例がガイアの夜明けで報道されていました。
ありえないことです。このようなことを行う企業は外国人に対してだけではなく、日本人労働者にも酷い扱いをしていると考えられま。
実習生の問題
・喧嘩、犯罪
警察庁によると2018年の技能実習生の検挙は1,642人。年々増加しています。
多い犯罪は窃盗ですが、近年では実習生同士、また上司への殺傷事件など凶悪犯罪に関わってしまうこともあります。
2020年10月には、ベトナム人13人が家畜1,000万円相当を盗難するニュースもありました。
犯罪が起きる大きな要因は以下です。
・日本に来るまでに多くの借金をしていて、返済できない
・まわりに悪いことに手を出している同郷の人がいて、誘われる
この後防止策にて述べますが、どちらも、選定の時点で防ぐことができる問題です。
・失踪
外国人技能実習生の失踪者数は約3%。技能実習生の募集が年々増加しているため、失踪者も増加しており、2018年の失踪者は9,052人となります。
失踪した実習生の動機は以下となります
①給料・業務内容が契約内容と異なる(長時間労働、最低賃金以下など含む)
②実習終了後も日本で働きたい(から実習終了間際で失踪する)
③会社からパワハラ、セクハラなどを受けている
④仕事が思った以上にきつい、指導が厳しい
⑤強制帰国になりそうだった(実習生要因も企業要因でも)
⑥保証金や渡航費用が稼げないと思った
その他
失踪は要因にもよりますが、受け入れ企業も監理団体も今後の技能実習生を受け入れられなくなる可能性があります。少なくとも、優良認定を受けることが難しくなることは間違いありません。優良認定を受けられないと、技能実習制度が5年間の受け入れを認めている場合でも3年までしか滞在できなかったり、受け入れ可能人数の上限が減少します。
・途中帰国
母国の家族に問題が生じた、妊娠したので母国で生みたい、寮での実習生同士の生活が馴染めない、仕事が思っていたよりも辛い、ホームシックになったなどの理由で途中帰国する場合があります。
日本人の早期退職が止められないように、実習生が決意した場合止める術はありません。
しかし外国人を受け入れるためにお金だけではなく相当な準備が必要な中、すぐに帰国されることは企業にとって残念なだけではなく大きな損害になります。
原因は実習生の問題の場合も、企業の問題の場合もあります。
送り出し機関・監理団体の問題
・実習生からの不当な現金の徴収
最も世間を騒がせている問題だと思います。
送り出し機関・監理団体が技能実習生から保証金を徴収したり、日本に行くために多額の費用を徴収したりするケースです。多い時は100〜150万円近く徴収しているそうです。そのお金の多くが監理団体・送り出し機関の経営層の私利私欲や、過剰接待に使われます。
当たり前ですが、100万円、しかも高い利息で返金しようと思えば、3年間の技能実習で稼いだお金が借金返済で終わってしまうこともあり、ひどければ返しきれないこともあります。そうすれば技能実習生は間違いなく絶望を感じてしまいます。こうした場合に犯罪や失踪などの問題が発生します。
・技能実習法に反した行動をしている
監理団体は、技能実習法より適切な技能実習が行われているか監査する立場にあります。しかし、監査を怠ったり、嘘の報告書を行ったりなどが理由で許可を取り消しさせている監理団体もあります。
また、監理団体を含め、技能実習生の失踪や途中帰国に対して違約金を定めることも違法です。
防止策
技能実習法による防止策
平成29年11月1日,外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(平成28年法律第89号。)が施行されました。その内容は例えば、監理団体を許可制とし、また、外国人技能実習法に対する罰則を設けるなどです。
失踪原因が実習先や監理団体、送り出し機関にある場合、受け入れ停止措置が講ぜられ、特に賃金不払いなどの違法行為の場合は、無期限受け入れ不可、かつ会社名の公表など厳しい罰則があります。監理団体は許可を取り消しされます。
また、そもそも受け入れ期間中の管理もハードルが高くなりました。
指定する帳簿の管理義務や1〜3ヶ月の監査・訪問の義務化など外国人技能実習生を受け入れるためのルールが多く設けられています。
受け入れ企業ができる防止策
細かいことを書き出すとキリがないのですが、重要なポイントをご説明します。
①適切な送出機関・監理団体を利用する。
これが最も大事なことです。
監理団体が法令を遵守しているか、無駄な費用を実習生から徴収していないか、過去の失踪率は必ずチェックが必要です。その他にも、現地での教育の内容の様子、契約内容の説明方法、送り出し機関が日本文化に理解があるか、監理団体が技能実習生を大事にしているかなどしっかり確認してください。現在はコロナで渡航が難しいですが、最初は現地の視察が必須だと思ってください。
詳細は「監理団体を選ぶポイント」に記載しています。
②契約書通りの適切な給与を与え、控除額も予めすべて伝える
適切な給料を支払うことは当たり前のことなので、割愛します。
一方で、控除額に関しては意外と軽く見ている企業が多い気がします。例えば、制服費用。日本ですと、「ズボンは茶色が指定だから用意してね」で済むことですが、技能実習生は日本に入国してから言われるとかなり困惑します。例え1,000円で買えるズボンでもです。それは金銭感覚の違いは大きな原因ですが、もう一つ、外国は日本よりも契約書の内容をしっかり確認します。
日本人は割と給与明細や雇用契約書も大雑把に理解すれば大丈夫、あとは会社がきちんと計算してくれるだろう、と思う方も少なくありません。海外では、そんなことはありません。節々まで細かくチェックします。
なので、上記のようなことが発生すると、「制服を買わなければいけないとは聞いていない」となってしまうのです。
③外国の文化を理解しようと努力する
例えば日本では人前で叱ることも教育の一つかもしれませんが、国によっては「馬鹿にされている」「恥をかかせようとしている」と感じる人もいます。異国で、家族と離れ働くということは大変なことです。彼らの支えになるのは、企業の職員の方々との信頼関係です。信頼関係を築くには、「相手を理解しようとする」姿がとても大事になります。
その他にも以下のような防止策があります。
・帰国後の就職先があるか、事前に送出機関に確認しておく。
・指導する際は、ダメであることだけではなく、「なぜダメなのか」を伝える
・社内でハラスメントが起きていないか、監理団体を通じて実習生に確認する
ARCH plusが行っている独自の防止策
①面接は企業の経営層の方必須、また、組合も必ず同席
企業・労働者それぞれが望んでいることを満たしているか、組合目線でも確認します。
例えば既に先輩実習生がいる企業が、経験豊富だからといって年配者を採用すると喧嘩になる可能性があります。外国では日本以上に年齢を重んじることもあり、後輩だけどかなり年上、となってしまうことに対してうまく立ち回れない方もいます。
②受入企業様のご担当者への外国人受け入れマニュアルのご説明
外国人技能実習生の受け入れは、経営層の方が決定することが多いですが、実際に実習生と接するのは担当の方です。担当の方のお人柄を知ること、外国人に接する際の注意点などを事前にご説明します。
③入国前講習では、雇用先毎にグループを作成し共同生活を行う
技能実習生は20代〜30代が多いです。この年頃で3〜5年間、他人と共同生活をすることはもちろん楽しいことばかりではありません。協調性があるかどうか、相性に問題はないか、などをチェックするために、実際に日本で共同生活を行うメンバーで組ませて最低1ヶ月、通常3ヶ月は一緒に住み込みで学校教育を行います。
もちろんですが、日本の生活様式やマナーについても教育します。
④フィリピン人スタッフによる実習生サポート
2週に1度はフィリピン人スタッフから連絡を取るようにしています。また、金銭に関わること、契約に関わることはフィリピン人スタッフから伝えるようにしています。
例えば、もし自分が中国語はわからない中、中国で働くときに、まわりに複数の中国人に囲まれて契約の説明をされたらわからなくても頷いてしまうと思うからです。そのため、弊社では、フィリピン人スタッフと1対1もしくは技能実習生の数の方が多い状態で説明を行うようにしています。聞きづらいことも聞きやすい環境を作ってあげることも大切です。
⑤日本人・日本文化との交流機会を提供する
現在はコロナでなかなか外出できませんが、実習生が休日に楽しめるように工夫しています。これは受け入れ企業にもお願いしていることです。
実習、技術の習得が目的とはいっても、休日家に引きこもっていてはホームシックにもなりますし、日本を好きにはなれません。でも、意外と引きこもる実習生は多いのです。
「どこにでかけていいかわからない」「どこに行ってもお金が高い」「日本語を勉強したいけどやり方がわからない」
お金がかからなくて、気分転換ができる場所、さらに言えば日本人と交流できる/日本文化を学べる場所はとても喜ばれます。
⑥実習生から一切費用を徴収しない
これは弊社というよりもフィリピンのルールになります。
フィリピンの法律により、技能実習生からは教育費用を一銭も徴収してはいけません。ブローカーなども厳しく取り締まられます。
政府が労働者を守る一方、労働者に対するペナルティも厳しくなっています。
それでも問題が発生した場合の解決策
技能実習生の相談窓口
技能実習生からは以下の機関に相談できるようになっています。母国語でも相談できるので、安心です。
外国人技能実習機構(OTIT)
都道府県労働局などの外国人労働者相談コーナー
弁護士
受け入れ企業の相談窓口
まずは監理団体に相談します。もし取り合ってくれない場合は技能実習機構に相談します。監理団体は事情があれば変更することも可能ですので、取り合ってくれない場合は変更することをおすすめします。
また、労働問題の場合は送り出し機関を巻き込む場合もあります。
フィリピンの場合は、フィリピン大使館も力になってくれます。
まとめ
外国人技能実習制度を活用する際は、最低限以下の点に注意してください。
①適正な送り出し機関、監理団体を利用する
②契約内容は慎重に確認する
③外国人に感謝の気持ちを持つ
今まで多くの受入企業/監理団体を見てきました。当然のように送り出し機関に過剰接待を期待する、外国人に対してすごく威圧的な態度をとる方も少ないですが見受けられました。過剰接待の収入源は何か、大事な自社の社員として扱っているかを考えなければいけません。「働かせてやっている」のではなく、「会社のために働いてくれている仲間」と思えば、ほとんどのトラブルは発生しません。
また、意外と多いのは「日本の文化の押し付け」です。丁寧にコミュニケーションを取っているのですが、「日本のあたりまえ」を一方的に押し付けているケースがしばしば見られます。相互理解の上で日本の文化を理解してもらうことが大切です。
当たり前のことですが、労働者と雇用主の間には信頼関係が必要です。言葉や文化の違いの問題で信頼関係を築くことが難しく感じるかもしれませんが、相手のことを理解しようとする姿勢は言葉や文化の壁を越えて伝わります。決して難しいことではありません。
この記事をご覧頂き、少しでも不安を解消できれば嬉しいです。まだまだ興味はあるが、トラブルが怖い、という方は是非見学だけでもしてみてください。
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