「技能実習制度」と2019年4月に入国管理法改正により施行された在留資格「特定技能」外国人を雇用するならどちらなのか解説します!
こんにちは。ARCH plusです。
今回は、「外国人技能実習制度」と在留資格「特定技能」それぞれについて解説します。
在留資格「特定技能」は、2019年4月に施行されてから、「全然活用されていないでしょ?!」というニュースをしばしば見ますが、果たして本当に「使えない制度」なのでしょうか?
目次
1993年に制定された「外国人技能実習制度」とは
外国人技能実習制度は途上国の青壮年を日本で受け入れて、OJTを行い、技能を移転するために策定された国際貢献を目的とした制度です。
制度化された当初は17職種で受け入れ可能でしたが、現在は82職種150作業が受け入れできるようになりました。
雇用形態は直接雇用ですが、監理団体、送り出し機関を通じて雇用のあっせんをしてもらう必要があります。中には、「企業単独型」といって、監理団体が不要なケースがありますが、よほど特殊なケースでない限り、難しいです。
外国人技能実習制度は2017年に改定された
外国人技能実習制度は国際貢献を目的であると同時に、日本の人手不足の貴重な労働力でもあるのが実態です。とはいえ、人権侵害や労働基準法違反などは絶対にあってはいけません。しかし、制度の目的を無視するだけではなく、外国人に対して人権問題になるような劣悪な環境を強いている企業が少なくありませんでした。
そのために、2017年11月に「技能実習法」が施行され、技能実習機構が設立されました。
これによる一番大きな注目点は、今までは法的権限のある罰則などが不明確でしたが、悪徳な監理団体・送り出し機関・受け入れ企業は法的に罰せられるようになりました。
また、監理団体も許可制、受入企業も認可制となり、技能実習生を受け入れるまでのハードルも高くなりました。罰則規定や受け入れのハードルを高くすることで、悪徳業者を排除に力をいれています。
またそれだけではなく、条件を満たす優良な団体には技能実習生の受け入れ期間の延長や、受入人数の拡大を認めるようになり、正しく運営されていればより一層、受け入れのメリットが享受できるようになりました。これらの改定は外国人にとってもプラスになる進歩です。
2019年4月に施行された在留資格「特定技能」とは
日本の人手不足解消に対して、外国人労働者を受け入れることを目的にした制度です。
日本は移民政策を行っておらず、特別な資格や能力がない限りなかなか在留資格がおりず、外国人にとって入国のハードルが高い国でしたが、単純労働の職種でも受けいれることができるようになったのです。
特定技能1号は、特定の産業に対して「相当程度の知識または経験を必要とする技能」がある外国人が働くことのできる在留資格です。
1号終了後、2号に移行できます。2号は「熟練した技能」がある外国人が働くことができる在留資格です。
雇用形態は技能実習同様、直接雇用です。(一部の職種で派遣も認められています。)しかし、実際には入管法で制定された受け入れ要件項目全てを企業単独が満たすことが難しく、登録支援機関に委託することになります。(例えば、母国語によるサポート、などがその一例です。)
特定技能の現状の雇用数
特定技能制度はできたものの、なかなか数が増えない、というニュースが度々放送されました。
開始3ヶ月での全国での雇用数は20人、現在の特定技能在留外国人は5,950人となっています。(2020年6月現在)なお、そのうちの3,500人がベトナム人です。
制度が制定された当初は、まだまだルールの整備と周知が十分ではない状態で強引に施行されたとも言われていましたが、現在は整備されてきました。それでも、この数値は政府が最初に想定した1割以下にとどまっています。
なぜ受け入れが進まないのか。
それはルールの整備が十分でなかったことも理由としてあげられますが、企業としては、転職できる特定技能をいきなり採用することにリスクを感じており、あくまで「技能実習から移行できる制度」と見ていることが考えられます。技能実習制度を通して、まずは強固な信頼関係を築き、技能実習生/企業、双方の意向が見えてから特定技能を活躍する、と考えられている企業が多い印象です。
現に、現在いる特定技能在留外国人のうち9割が技能実習からの移行となります。そして次に多いのは日本で勉強していた留学生の登用です。
特定技能の活用事例
現状ではやはり大都市に集中している様子です。
愛知県が最も多く、521名、ついで千葉497名、東京448名です。
職種は圧倒的に飲食料品製造業分野が多く、2094名と、40%弱を占めます。これは、飲食料品製造業分野には技能実習にはない職種が含まれていることが要因だと考えられます。
参考)出入国在留管理庁(特定技能1号在留外国人数(令和2年6月末現在)
それぞれの在留期限
技能実習は1号、2号、3号とあります。
1号は1年、2号は2年、3号は2年と計5年滞在可能です。
各段階で試験があり、1号から2号へは試験に合格しなければ移行できませんが、試験の合格率は95%をこえ、全うに該当職種の実習をしていれば合格できるといえるでしょう。
なお、3号に移行するためには、監理団体及び受け入れ企業ともに技能実習機構から「優良」の認定を受ける必要があります。
こちらも、失踪を多く出していたり、労基法違反をしたりしない限り、実習生受け入れから2年ほどたてば問題なく取れるレベルとなります。
一方で、特定技能は1号と2号があります。
1号は上限5年、1年/6ヶ月/4ヶ月ごとに更新します。2号は上限が定められておらず、更新も3年/1年/6ヶ月ごとです。また、2号は家族(配偶者と子供)の帯同も許されます。
対象職種の一覧
【技能実習制度で受け入れることのできる業種一覧】
農業関係(2職種6作業)
漁業関係(2職種10作業)
建設関係(22職種33作業)
食品製造関係(11職種18作業)
繊維・衣服関係(13職種22作業)
機械・金属関係(15職種29作業)
その他(16職種29作業)
詳細はこちら外国人技能実習生の受け入れ職種に限りがある!移行対象職種とは?
【特定技能で受け入れることのできる業種一覧】
1.介護業
2.ビルクリーニング業
3.素形材産業
4.産業機械製造業
5.電気・電子情報関連産業
6.建設業
7.造船・舶用業
8.自動車整備業
9.航空業
10.宿泊業
11.農業
12.漁業
13.飲食料品製造業
14.外食業
詳細はこちら→出入国在留管理庁(新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組)(p.7-9)
それぞれの在留資格取得の要件
技能実習は、18歳以上の青壮年であれば、極端な話誰でも申請可能です。※ただし、介護職種はN4に合格している必要があります。
該当職種の経験がある、もしくは学校にて勉強の実績は必要ですが、厳しいものではありません。
一方で、特定技能は①指定の試験に合格する、もしくは②技能実習2号を良好に修了している、のどちらかである必要があります。
①の試験は、職種によって実施されている国、頻度がバラバラです。試験内容は、該当職種に関するものと、日本語の試験になり、日本語はN4相当レベルが求められます。
②は技能実習の職種と特定技能の職種が結びついていれば、そのまま移行できます。ただし、結び付けられる職種は決まっており、要件から外れてしまうようであれば、職種毎の①のテストを受検する必要があります。その際は日本語のテストは免除されます。
技能実習にはあるが、特定技能にはない職種が多いので、注意が必要です。
なお、技能実習の職種と特定技能の職種の対応表は以下を参考ください。
出入国在留管理庁(新たな外国人材の受入れについて)p.25〜-p.30
それぞれの受け入れまでの手続き
技能実習生はまず監理団体に採用の要件などをオーダーします。
その内容を、監理団体が送り出し機関(現地の人材エージェント)に連絡し、現地で応募をかけます。候補者から企業が面接にて採用した後、現地で教育をしつつ、入国までの機構や入管への書類申請を行い、入国します。
特定技能は、国によって様々です。登録支援機関を利用する場合は登録支援機関が人材の紹介をすることもありますが、基本は自身で探すことになります。人材が見つかれば、入管に書類を申請し、受け入れます。ただし、国によっては、送り出し機関との契約が必要になる場合もあるので、要注意です。
技能実習は、監理団体が送り出し機関と契約しますが、特定技能は、受入企業が送り出し機関と契約することになります。
それぞれの外国人受け入れの際の注意すべきポイント
技能実習は、基本的に監理団体がサポートしてくれます。監理団体は、技能実習機構から、実習実施者(技能実習生受け入れ企業)を「監査」する立場にあります。とはいっても、企業側の立場にたって、物事を教えてくれる団体が多いので、初めて外国人を受け入れるには、とても心強いと思います。
一方で、サポートが手厚い分、監理団体のコストもかかります。4〜6万円/一人が相場と言われています。そのうち、5,000円〜1万円は海外の送り出し機関に支払われています。安すぎるところがあれば、注意してください。実習生の母国語がわかるスタッフがいるのか、困った時は24時間電話対応してくれるのか、実習生との間にトラブルが生じた際、手助けしてくれるのか、帳簿の管理などのアドバイスをしてくれるのか、などよく確認してください。
また、実習生を受け入れている場合、3年に1度技能実習機構が突然監査にきます。その時に帳簿が揃っていなかったり、意図せずとも労基法違反があったりすると、注意喚起、ひどい場合は罰則があります。監理団体のサポートが重要です。
特定技能は、登録支援機関がサポートもしくは、自社のみで受け入れします。監理団体は、「実習実施者を監査する立場」でありつつ、サポートをしている、とお伝えしましたが、登録支援機関の業務は、「外国人労働者のサポートをする」立場になります。そのため、帳簿などの確認というよりは、在日外国人の困っていることを手助けします。ここで注意なのが、特定技能は転職が可能であるため、登録支援機関は外国人が転職したい場合は、転職のサポートをする義務があります。※なお、登録支援機関に業務委託しない場合は、企業がサポートする必要があります。あくまで、「外国人が日本の生活・仕事に困らないため」のルールです。
一般的に監理団体のコストよりも安いですが、平均2〜3.5万円が多いです。
また、登録支援機関を通すかどうかに関わらず、特定技能外国人の受け入れ時に送り出し機関との契約な国である場合、送り出し機関にも費用は発生します。例えばフィリピンなどでは、そのうち3,000〜5,000円は送り出し機関に支払われます。
特定技能外国人を受け入れている企業は、入管に管理下にありますが、定期的に監査にくるなどのルールはありません。基本的に問題がなければ来ないでしょうが、抜き打ちがないとは言い切れません。
なお、技能実習から特定技能への移行は可能ですが、特定技能から技能実習への移行は不可能です。
「留学生がそのまま日本に滞在したい場合」「技能実習にない職種(飲料系、外食系など)」の場合は、最初から特定技能を選択するしか方法がないでしょうが、「転職可能」「移行不可能」ということを鑑みて、最初は「技能実習」と選ばれる企業が多いのが現状です。
まとめ
技能実習制度が「研修制度=実習のための雇用」ですが、特定技能は「労働力補助の制度」となります。
多くの業種で人手不足が深刻化している日本。外国人労働者の力を借りなければ成長できない、企業も立ち行かなくなってしまうところも多いです。
ただ、外国人労働者の受け入れはやはり企業にとってはハードルが高いでしょう。言葉の壁、文化の違い、相手国のエージェントとのやり取り…サポートしている団体が年々増えていますが、サポート内容は様々です。
外国人は3〜10年滞在しますから、一度お付き合いすると長くなります。
どんなサポートが存在するのか、自社が重要視するサポートはなにかをよく吟味して、業者を選ぶことが重要です。
関係資料
出入国在留管理庁(特定技能1号在留外国人数(令和2年6月末現在)
出入国在留管理庁(新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組)
出入国在留管理庁(新たな外国人材の受入れについて)
ご不明点などございましたら、お気軽にホームページよりお問い合わせください。
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